いい機会ですので、ここで出版のダウンロード配信についての私見を書きたいと思います。自分は、インターネットは「宣伝媒体」としては超有効だが、「データをダウンロード販売して直接お金に換えること」においてははなはだ不適当なメディア・インフラだと考えております。いくつかの例外を除いて、デジタルデータのダウンロード配信のビジネス化は、ことごとくが失敗の歴史であり、その最大の理由は、
「人は、“かたちのあるもの(本やグッズなど)”にはお金を払うが、“かたちのないもの(デジタルデータ)”には払いたくないもの」だと思うからです。
須賀原氏が美談のように書かれている「ネット配信はほとんどが赤字であり、ネットだけでは全然儲けが出ないのだ。それでも、近未来のマンガ界のためにネットに先行投資してきたのだ。」という苦しい実態は、当然のことだろうと考えます。従来の出版ビジネスの延長で「ネット配信で儲けよう」と考える時点で、おそらく無理があったのです。従来の価値観でネットをとらえる限り、利益を上げることは困難でしょう。
ダウンロード配信の課金ビジネスで成功したといえるものは、今のところ「音楽(iTunes、着メロ)」「エロ動画」、「ケータイ配信の(エロ)マンガ」、一部のネットサービス(ツール系PCソフトウェア販売、オンラインゲームなど)くらいではないでしょうか。それ以外、従来紙の本やDVDなどで販売されていたコンテンツ(マンガや小説、ドラマ・映画など)のダウンロード課金システムは、ほとんどビジネスになっていないはずです(私が知らないだけかもしれません。他に成功例があったら教えてください)。
自分は、佐藤秀峰氏の自作マンガのネット配信を、興味を持って見ておりますが、ビジネスとしては、残念ながら成功する可能性は低いのではないかと考えています。理由は上に書いた通りで、普通の読者は「ネット・コンテンツはタダ」という心理が強いからです。自分の考えでは、ネット上ではあくまで無料で作品を読ませ、紙の本を売るための宣伝に徹したほうがいいように思います。
ここで注目すべきは、講談社の「モーニング・ツー」が、実験的にネットで雑誌を無料公開したところ、紙の本の売れ行きに影響しなかったばかりか、かえって売れ行きが伸びたという興味深い実験結果でしょう。
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